非正規社員への退職金支払いを命ずる!

2月20日東京高裁で東京メトロの売店で働く子会社雇用の契約社員に対して退職金を支払えとの判決が出されました。正社員と同じ業務をするのに賃金、退職金及び処遇に格差があり過ぎるとして4名の契約社員が訴えを起こしていました。2017年3月の一審東京地裁の判決からは前進した内容です。新聞では次のように報じています。

2月21日の朝刊で報じられた内容はこちらです。

この判決に対して原告の弁護団等は次の声明を出しました。

メトロコマース事件東京高等裁判所判決にあたっての声明

1 判決の概要
  
  株式会社メトロコマースの契約社員Bの女性4名が、同社に対して、賃金格差
 の是正と差額賃金相当額などの支払を求めた損害賠償事件の控訴審(平成29年
(ネ)第1842号)において、2019(平成31)年2月20日、東京高等
 裁判所第17民事部(裁判長川神裕、裁判官岡田幸人、裁判官森剛)は、一審原
 告(控訴人)ら3名に対して、請求を一部認容する判決を言い渡した。
  判決は、労働契約法20条施行後に発生した住宅手当、褒賞、退職金の一部及
 び弁護士費用の相当額を損害賠償として認めている。一方、原告の1名の請求を
 全て棄却し、本給、資格手当、賞与については、いずれも棄却している。
  さらに、早出残業手当の差額相当額の損害賠償を認容した一審判決の取消を求
 めた一審被告の控訴については棄却した。

2 判決理由中の判断について
  
  本判決は、一審原告らと比較対象となる無期契約労働者について、全正社員と
 した一審判決と異なり、原告が主張した販売業務に従事する正社員と判断した。
  そのうえで、住宅手当については、「従業員の住宅費を中心とした生活費を補
 助する趣旨で支給されるもの」であり、「生活費補助の必要性は職務の内容等に
 よって差異が生ずるものではない」等として、契約社員Bに支給しないことを不
 合理だと判断している。
  また、褒賞については、「業務の内容にかかわらず一定期間勤続した従業員に
 対する褒賞ということになり、その限りでは正社員と契約社員Bとで変わりはな
 い。」として、契約社員Bに支給しないことについて不合理と判断した。
  退職金については、「少なくとも長年の勤務に対する功労褒賞の性格を有する
 部分に係る退職金すら一切支給しないことについては不合理といわざるをえない。」
 と判断した。しかし、その損害額については、原告らの退職時の月額賃金を基礎
 に、「正社員と同一の基準に基づいて算定した額の4分の1」としており、極め
 て低額である。
  上記以外の本給、資格手当及び賞与について、不合理と認めなかったことは、
 極めて不当である。

3 判決の評価
 
  退職金について、一部ではあるが、契約社員Bに支給しないことを不合理だと
 判断し、損害賠償を認めたことは一歩前進である。
  しかしながら、本給及び賞与等の相違を不合理と認めなかったこと、退職金に
 ついての認容額が低額であること、1名の原告について請求を棄却したことにつ
 いては、速やかに上告し、最高裁判所で是正を勝ち取ることに全力を尽くす決意
 である。

2019(平成31)年2月20日
労働契約法20条メトロコマース事件原告団・弁護団