また、選挙が近いのでしょうか、11月23日の日本経済新聞に自民党議連による「最低賃金全国一律化」の提言検討の記事が掲載されていました。その翌日、CUNNメール通信でEU(欧州連合)の指令案の記事が配信されました。何ともスケールの違い過ぎる話です。
~ CUNNメール通信 ◎ N0.1839 2020年11月24日~
1.(情報)EUが公正な最賃へ指令案/国際労働財団がシンポ/法整備と協約の両 方を追求 201121連合通信・隔日版
欧州連合(EU)を運営する欧州委員会がこのほど、まともな最低賃金にする仕組 みの整備を加盟国に求める指令案を発表した。報道などによれば、近年貧困層が増加 傾向であることを憂慮、参考値として平均賃金の50%などの水準指標を示していると いう。国際労働財団(JILAF)が11月18日に行ったオンラインシンポジウムに は、2015年に最賃法を施行したドイツ、高い産業別労働協約適用率を誇るデン マークから、労使団体が出席。賃金を底支え、底上げする意義が共通して語られた。
〈JILAF最賃シンポ〉・上/「最賃の悪影響はない」/2015年に法施行したドイツ
ドイツは2015年、法定最低賃金を施行した。当時の水準は8・5ユーロ(10 37円)。賃金の低い旧東独地域を含めて、全国一律で導入した。 産業別労使による労働協約で賃金・労働条件を定めてきたが、90年代後半以降の規 制緩和により、協約が適用されない低賃金の非正規労働者が急増した。 ドイツ労働総同盟(DGB)のヤン・シュテルン執行委員は「最賃法制定にDGB は当初反対したが、規制緩和でワーキングプアが増え、06年大会で法制化要求を確認 し、キャンペーンを開始した」と振り返る。その後、13年の国政選挙で最賃が争点と なり、法制化へとつながった。 2年ごとに約4%ずつ引き上げ、20年の現在は9・35ユーロ(1144円)。タク シーや飲食、ホテル、宅配便、警備員、娯楽などサービス業関連の職種や、旧東独地 域では2割以上の労働者の賃金が底上げされた計算だ。 シュテルン氏によると、法施行で「ミニジョブ」という低賃金労働が減った一方、 失業率は改善し、企業の撤退や破産などの影響も見られなかったという。 経営者団体であるドイツ使用者連盟(BDA)のレナート・ホルヌング・ドラウス 常務理事も「移行期間を設け、低賃金労働者の賃金を段階的に引き上げたことで、雇 用への悪影響はなかった」と語った。 BDAも当初は法制化に反対した。ドラウス氏は「賃金が低い国からの労働者の移 動もある。最終的には法案に賛成した。最賃は賃金上昇とリンクしている。労働条件 を立法で保障することは重要だ」と語った。 ドイツの最賃委員会は、22年7月に10・45ユーロ(1274円)への引き上げを決 定している。 ※1ユーロ=122円で換算
〈JILAF最賃シンポ〉・下/労働協約か最賃法か/指令案に労組の間で賛否
JILAFのシンポジウムでは、最賃の底上げを求めるEU指令案への態度も議論 になった。同案は適切で十分な水準の最賃とする仕組みの整備を加盟国に求め、賃金 中央値の60%や平均賃金の50%を指標として示しているという。 ドイツ労働総同盟のシュテルン氏は、低賃金を悪用したソーシャルダンピング(社 会的な不当競争)をEU加盟国間で起こしてはならないと指摘した。特にコロナ禍の 中で働くエッセンシャルワーカーへの称賛を、具体的に賃金・労働条件の改善につな げる必要があると強調し、「感染症によって落ち込んだ経済の回復を後押しするだろ う」と語った。 一方、デンマーク労働組合総連合(FH)は反対の立場だ。FHは国内労働者の約 7割を組織し、産業別労働協約の適用は国内労働者の8割強にも上る。 個別企業労使の労働協約ではなく、産別労使の労働協約で国内の大半の労働者の労 働条件を底支えしていることがポイント。低賃金を活用して企業の競争力を強めよう とするソーシャルダンピングの防止に大きな役割を果たしている。 ヘイディ・ロニーEU・国際局担当補佐官は「労組への加入や、団体交渉に参加す る労働者の意欲が失われ、交渉力、協約適用率が低下することを懸念している」と述 べた。高い協約適用率を誇るスウェーデンやオーストリアも同様の態度だという。 欧州労連(ETUC)は最賃について拘束力あるEU指令を求める姿勢。最賃と並 行して、産別労使による団体交渉の強化も求めている。 各国の実情に応じたルールづくりと、漏れのない底支え規制をできるかが注目され る。
●法律と協約の両輪で
底支えの役割を負わせるのは、労働協約か、最賃法か――。 欧州の労使関係を研究してきた田端博邦東京大学名誉教授によると、この約30年間 に先進国の労組組織率が半減し、それまで主流だった産別労使の労働協約による賃金 決定方式が困難になっているという。 特に英国では「80年代以降のサッチャー首相による規制改革で労組の組織率は急激 に低下し、90年代末には産業別労使による労働協約はほとんど消滅した」と話す。 この頃から低賃金の非正規労働者が増え、最賃の必要性が語られ始めたのは、日本も同 様である。 田端氏は平均賃金を指標とするEU指令案に着目、「最賃は今後、平均的 な生活を送れる水準を享受できるようにすべき。そういう段階に来ているのではないか」 とし、貧困解消・格差是正の有効な政策だと述べた。 併せて「英国労働組合会議(TU C)は産業別労使交渉体制の再建を、メーンの運 動目標の一つに掲げている」とも述べ 、最賃法と労働協約の両輪によるセーフティー ネットの整備に、分断社会克服への希望 を託した。 …………………………………………………………………………………………………
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日本の最低賃金決定システムは中央審議会の目安を見ながら、都道府県毎の地方審議会でほぼ1ヶ月間、10回程度審議され、都道府県ごとに金額が決定されます。金額決定までのプロセスは多少異りますが、公労使の主張は中央と殆ど変わりません。なのに金額は異なる、47通りに近い内容。全国一律化を望む中小労働者・非正規労働者は多数、殆どと言っても良いくらい。労働組合からの声はそれにしても小さい。何故だろう?