ジョブ型「職務給」を検証しよう

CUNNは7月22日メール通信No.2355を配信しジョブ型「職務給」などの問題点を指摘する連合通信隔日版の記事を紹介しました。岸田首相は本人肝いりの「構造的な賃上げ」実現手段としてジョブ型「職務給」導入を豪語しています。詳細は以下の通りです。

◎  CUNNメール通信  ◎ N0.2355 2023年7月22日
1.(情報)〈労働時評〉ジョブ型「職務給」の狙い/リストラに労組弱体化…
                         230722連合通信・隔日版

 岸田首相が「構造的な賃上げ」を提唱している。鳴り物入りだが、内容は雇用・賃
金制度の改変である。ジョブ型「職務給」などの問題に焦点を当てた。

●三つの方針文書

 「構造的な賃上げ」は「三位一体の労働市場改革」と連動している。内容は(1)リ
スキリング(技術再教育)(2)ジョブ型人事(職務給)の導入(3)労働移動の円滑化―
―である。
 総合的な政策内容は「経済財政運営と改革の基本方針2023」(骨太方針)で
「新しい資本主義―未来への投資拡大と構造的な賃上げ」をタイトルに、「分厚い中
間層の形成」などを打ち出している。
 具体的な内容は「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画2023改訂
版」でジョブ型(職務給)や労働移動の推進策などを掲げている。
 さらに厚労省労働政策基本部会の「変化する時代の多様な働き方」報告書では、
「解雇無効時の金銭解決」や労使一体化をめざす「エンゲージメント」の向上など、
労働組合の弱体化まで踏み込んでいる。

●過去に導入を断念

 賃金制度では、ジョブ型人事として「職務給」の導入を提起しているのが最大の特
徴である。
 職務給とは、職務分析と職務評価によって、各職務の知識、熟練などを要素として
賃金を決める制度である。勤続年数が長くなっても、上級職務に昇進しない限り、昇
給も原則としてありえない。
 日本では1962年に鉄鋼大手で導入されたが、古い事業所から新鋭製鉄所への配
転で賃金低下の問題もあり断念した。各産業でも技術革新による職務内容の変化や多
能工化、配転増加などから制度導入をあきらめている。
 賃金制度はその後、労働者の職務遂行能力を基準とする「職能給」となり、「職能
資格給」から、仕事・役割・貢献度の「役割成果給」へと変転した。

●リストラの新たな道具

 今回の「職務給」はジョブ型人事として提起されている。導入理由は「日本の年功
賃金制は転職しにくい」「諸外国との賃金格差の拡大(日本は低位)で、人材獲得競
争でも劣後」などをあげている。
 しかし、日本の賃金が諸外国より低くなったのは、財界が96年から20数年にわた
り、ベア0%台(20年0・17%など)を強行した結果であり、賃金制度の問題ではな
い。さらに従業員給料への「成果配分の目詰まり」を指摘しながら、513兆円にも
増大した内部留保の還元に触れないのは問題だろう。
 ジョブ型人事が導入されている職場の問題も指摘されている。日立では、一つの職
務のスキルレベルだけで「責任」「職務知識」「期待行動」「資格」など約30項目を
設定。人事評価による賃下げも表記されている。NTTでは基準内賃金の引き下げ
や、扶養手当もなくなり、職場の不満が高まっているという。日本IBMでは「パ
フォーマンス改善計画」(PIP)の過剰ノルマで退職・解雇強要も告発されてい
る。
 日本のジョブ型人事は、欧米の職種別熟練度別の横断賃金とは異なる。各企業で職
務と賃金などの労働条件が労働者ごとに決定され、集団的労使関係の弱体化と賃金・
雇用の個別リストラも懸念されている。

●労働移動とセット

 「構造的な賃上げ」では、リスキリングと成長産業への転職など労働移動がセット
で提起されている。
 リスキリングの推進も「個人支援」など自助努力を重視する。ドイツではAI(人
工知能)など第4次産業革命に対応してフォルクスワーゲンをはじめ、業種と地域の
26センターで対応。研修費用や研修中の賃金助成を行っており、日本の施策は遅れて
いる。
 問題は転職による賃金など処遇の変化である。厚労省「報告書」でも「転職に当
たっては、失業の長期化や賃金低下の懸念もある」と指摘。転職で3年後に年収が1
00万円以上あがる確率はわずか6%、50万円以上は4%に過ぎない。
 転職希望率も22年で正規従業員の14・7%。13年の9・4%から微増にとどまって
いる。転職促進による賃上げは、針小棒大な提起といえよう。

●退職金課税強化で増税に

 「労働移動の円滑化」も重視する。雇用の流動化・不安定化を進める方針だ。
 「実行計画」改定版では、退職所得課税制度の見直しなどを提起。転職促進へ向
け、長く勤務した労働者の退職金課税を強化する方針であり、働く人からも批判が上
がる。
 「多様な働き方」も推進し、副業・兼業の奨励やフリーランス拡大も提起。職務限
定・勤務地限定・時間限定社員など、正社員の一層の多様化を狙っている。
 厚労省の基本部会「報告書」では、労働者に選択権のある「解雇無効時の金銭解
決」も言及。解雇自由化社会となる、違法解雇の金銭解決合法化は、労働界を挙げて
断固阻止すべき重要課題である。

●一層の労組弱体化を狙う

 「骨太の方針」は「分厚い中間層の形成」を掲げ、「資産所得倍増プラン」を提
起。「雇用者の資産形成の強化」として、従業員の賃上げでなく、経営側と一体の従
業員株主化を打ち出している。
 厚労省「報告書」も人事制度では、会社の目標達成と働く人の主体的貢献など労使
一体化をめざす「エンゲージメント」の向上まで踏み込んでいる。
 岸田政権の雇用・賃金改変と労組弱体化を狙う労働政策。制度導入阻止と併わせ、
働くルールの対抗軸確立と集団的労使関係の強化が求められる。
               
                      (ジャーナリスト・鹿田勝一)

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