雇用責任回避と経費節減に業務委託を悪用 

CUNNは10月4日、メール通信NO.2221を配信し業務委託契約を装い、自社の雇用責任を回避したり経費削減に知恵を絞る悪事例を2件紹介しました。以下の通りです。2例ともに当該労働者が労働組合に相談し解決に向け取り組んでいます。

◎  CUNNメール通信  ◎ N0.2221 2022年10月4日

1.(情報)使用者責任避ける隠れみのに/「業務委託」めぐる二つの事件
                                                    221004連合通信・隔日版

 労働者として働いてきたのに、実は委託契約だと言われ、権利行使、権利保障が妨げら
れるというトラブルが立て続けに起きている。 政府が、雇用によらない働き方を推奨す
る一方で、請負契約が、使用者責任を回避するための隠れみのとして利用されている実情
が浮かぶ。

●有給取得、認めず/アテネ・フランセ

 老舗の語学学校アテネ・フランセ(東京都千代田区)では、フランス人講師たちが労組
に加入し、有給休暇の取得や無期雇用への転換を求めているが、学校側は講師とは「業務
委託契約」であると主張し拒否している。
 アテネ・フランセ労働組合と上部団体の横浜地区労働組合協議会(神奈川労連)による
と、中央労働基準監督署は4月、同校に対し労働基準法24条違反(賃金未払い)があった
として是正勧告を行った。
 フランス人講師の40代男性が昨秋、有給休暇を取得したところ、その後学校側の求めに
応じて行った補講の賃金が支払われなかったことに対する勧告。学校側は「業務委託契約
」と主張し、「補講の対価」として相応の金銭を供託したが、講師の男性は賃金として支
払うべきだとして受け取っていない。中央労基署は勧告の「未是正」として扱っている。
 労基署への申告後、学校側は、男性が子どもを通わせる保育園に電話するなどの嫌がら
せも行ったという。
 その後、他の講師が有給休暇の取得や、無期雇用への転換を求めたが、業務委託契約と
の理由で拒否されている。
 同労組は、講師らの契約書に「雇用契約」と書かれ賃金規定が定められていたことや、
ビザの申請書や保育園の就労証明書に学校側が「雇用契約」「パートタイム」と記入して
きたこと、同校が雇用調整助成金などを受給してきたことを挙げ、業務委託契約とする同
校の主張の矛盾を指摘している。
 今後、訴訟提起も含めて検討している。

●看護師を業務委託に/茨城県のコロナ療養施設

 茨城県内のコロナ療養施設で点滴などの業務を担っていた看護師が、「即日解雇」され
たのは違法として、県と、仲介した人材会社メディカル・コンシェルジュに対し計340万
円の賠償を求め、このほど水戸地裁に提訴した。
 看護師の女性は、メディカル社に紹介され、昨年10月下旬から翌年3月末までの契約で
働き始めたが、1月半ばに身に覚えのない理由で契約を打ち切られた。「即日解雇」だっ
た。
 女性の契約は業務委託で時間給。業務委託は発注者の指示を受けず自力で業務を遂行す
る必要があるが、契約書には業務に際し「県の指示に従わなければならない」とされ、点
滴などの医療行為については医師の指示に従っていた。
 訴状は、実態は雇用であるものを業務委託契約としたとし「エッセンシャルワーカーで
ある看護師に十分な法的保護が及ばないリスクを負わせ」たと批判している。
 仲介したメディカル社の言動も解せない点が多い。同社は看護師の勤務シフトを組み、
女性に「即日解雇」を告げるなど雇用主や使用者であるかのような振る舞いをしている。
 原告の女性は東京ユニオンに加入。県やメディカル社は「適正な業務委託」(県)、
「業務委託として紹介しただけ」(同社)などとして、当事者として是正しようとする姿
勢を見せていないという。
 茨城県、人材会社のいずれもが責任を負わない仕組みに、「業務委託契約」が利用され
ている――そんな実情が浮かぶ。

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