6月になると夏季賞与(組合でいう一時金)が話題に上がります。札幌祭の時季と重なることもあり夏季一時金交渉にも力が入ります。賞与支給内容決定にあたり会社裁量が大きくて当然とする意見が良く聞かれます。賃金支払いの中に月例賃金の他に「賞与」を設定するかどうかは会社の決めることです。ただ、一旦就業規則・雇用契約に定めた「賞与」支給の内容は、規則・制度によって運用されなくてはなりません。社長の好き嫌い、社員間の受けの良し悪し、性別による差を設ける等の運用は不可です。当然、労基法や労働に関係する法律の趣旨に反するものも無効となります。そんな相談が寄せられました。
【相談内容】 1.某市内保育園勤務の保育士。6月10日が夏季賞与支給日。算定期間は前年11月から 当該年4月まで。 2.本人は前年8月8日に出産した。8月9日からは産後休業8週間を取得した。 3.また、10月7日から今年4月まで1出勤日に1時間の時短勤務の適用を受けた。 これは法人が定める育児休業規定による措置。法人が育児休業法に基づき制定した。 4.6月10日の支給日前に本人は園長・事務長と面談し、出勤率が賞与支給規定に定める 90%を下回るので全額(基本給×2カ月)不支給とするとされた。 ただし、救済措置として、共済会から10万円の祝い金を支給するとされた。 5.本人は、出勤率算定にあたり控除対象となるのは勤怠不良とされる欠勤・遅刻・私傷病 休業なので労基法や会社の育児休業規定による休業は除外されるのではないかとした。 6.会社は、そのような理解はしていないし、入職時にも説明済みであるとした。 7.本人は出産間際迄勤務し出産休業による人的不足をカバーしようと努力してきた。 8.法人の対応は合理的と言えるのか。
【次のようにアドバイスしました】
1.賞与規定は合理性の範囲内で事業者が任意に規定できる。法人の出勤率90%に関わる 定めは従業員の出勤率を向上させ、貢献度を評価して、従業員に高い出勤率による高水 準の支給を確保するとのことであり、まずまずの経済的合理性がある。 2.本人が行使した産後休業や勤務時間短縮措置による育児時間取得はそもそも国法である 労基法等に保障されるもの。 3.この法益を保障する法の趣旨を実質的に失わせるような賞与支給要件は無効。 本件90%条項が産前産後休業や育児休業等を取得した保育士に減額・不支給を許すと いうことは法益を著しく損ねる。不合理の極み。 4.当然、本人には通常賞与が支給される。 5.堂々と通常支給を請求することです。訴訟案件となるが、労組対応とし交渉案件とする ことも可能。是非労働組合(個人加盟労組等)加入を検討してはどうか。 6.ちなみに共済会からの10万円は賃金の代替措置とはならないので、通常支給であって も受け取り可能。
今年は一時金・賞与に関する相談が増えています。7月頃まで支給時期とする会社が多く、相談はまだ増えると思います。一時金・賞与減額に「始末書」「訓戒」等の懲戒を理由とされることがあります。否定はしませんが、これもあくまでも規則に則った範囲のことです。