原則5年を当面3年で評価できるか!? 理由がないです。

昨年末12月27日に第158回労働政策審議会労働条件分科会が開催されました。議題は「賃金請求権の消滅時効の在り方について」ということで、この間の議論のまとめ報告と厚生労働大臣へこのまとめ報告を建議することの確認です。「この間の議論」とは、2020年4月の改正民法施行では賃金請求権について従来の1年を消滅時効が5年に改定されるが、これに合わせて労基法の賃金請求権の消滅時効を現行2年から5年に延長するのか、ということです。その結果については当面3年の消滅時効」ということでほぼ強引にまとめられた感じです。その様子は以下の新聞報道を参考にして下さい。

2019年12月28日の朝刊で日経・朝日・読売が報じた内容はこちらです。

この議論が始まった当初から使用者側委員は、企業経費の負担増が尋常ではないので2年据え置きを主張していました。この時点から議論に違和感を感じています。賃金を支払わないということは労基法第24条を犯す行為であり使用者は労基法120条に基づき罰金刑に処せられるのです。被害者である労働者がそのような経済苦中で賃金回収行為は、民法を上回る期間を設定し「労働者の権利保護」とすべき、との観点から現行の労基法上の消滅時効2年が設定されています。これが、何故、民法を下回る期間に甘んじなければならないのか、理由がわかりません。使用者の脱法行為による被害者・労働者がなぜ従前より不利益な状態を受け入れることになるか、議論経過を見る限り全く解明できませんでした。そもそも使用者側の経費負担増とは賃金台帳に関連する資料保存経費や請求額の負担増を指しているので、公正な経営であれば問題のないものです。

第158回労働政策審議会労働条件分科会で承認された「賃金等請求権の消滅時効の在り方について(報告)」はこちらです。

議題となった「賃金請求権の消滅時効の在り方について」の報告(以下、「報告書」という)を当方でまとめてみました。

➀ 賃金請求権の消滅時効期間は5年。但し当分の間は3年とする。起算点は現行のとおり。
➁ 年次有給休暇請求権等の賃金請求権以外の請求権の消滅時効期間は現行の2年を維持。
➂ 労働者名簿や賃金台帳等の記録保存義務原則として5年。但し当分の間は3年。
➃ 付加金の請求期間は原則5年。但し当分の間は3年。
➄ 施行期日は民法一部改正の施行日(2020 年4 月1 日)とする。
➅ 施行期日以後に賃金支払期日が到来した賃金請求権の消滅時効につき改正法を適用する。
➆ 改正法施行から5年経過後の施行状況を勘案しつつ検討を加える。

➀の消滅時効を原則5年とししつも当面の間3年とする、の理由は、労使関係の安定を図るためと、紛争の早期解決・未然防止への影響も考えたうえでの配慮とのことです。そもそも、賃金をまともに支払わない使用者に対して労使関係の安定を持ち出すことに違和感を覚えます。労働局の集計を見ても残業時間の違法な状態の増加と残業手当不払は年々増加しています。このような状況下で使用者限定の「徳政令」のような3年の時効消滅は、何の解決にもになりません。そして、更に不可解なのは、⑦の5年経過後の検討です。今、3年にする理由が判然としないのに、5年経過して「消滅時効は5年が適当」となるかどうかです。審議会の議論の中に、職場に対する想像力というかイメージが貧困すぎると言わざるを得ません。日本労働弁護団は12月24日の第157回労働政策審議会労働条件分科会でこの報告書が提示された後、すぐに反対声明を出しています。

2019年12月26日付日本労働弁護団反対声明

多くの労働争議を担当し解決してきた弁護士グループだけに大変理路整然と報告書の欠点を指摘しています。ただ、中小・零細で働く組合員で構成する地方の地場労働組合としては、民法規定を上回る10年程度に消滅時効を伸ばしても良いのかなと感じます。賃金未払の未然防止を考えれば、労基法の罰金刑が「30万円以下」と抑止力には乏しい中、被害者たる労働者の権利行使の期間を優遇することが最善の未然防止策になると考えるからです。労働組合の最大組織「連合」も事務局長談話を2019年12月27日付で出しました。

2019年12月27日付連合事務局長談話はこちらです。

何と言って良いのか複雑な思いで読みました。多方面に気配りをするとこうなるのかなというのが感想です。でも、この談話を読んで「よくぞここまでやってくれた」と思う組合員はどれだけいるでしょうか。使用者側委員の意を汲んで、いつ改正されるかも担保されない、民法規定を下回る「消滅時効3年」を受け入れた理由が全く説明されていません。今、連合では各地域で産別に加盟できずに「地域ユニオン」「地区ユニオン」として活動する単組が相当数存在します。私たち札幌地区ユニオンもその一員です。約40単組・900余名の組合員が職場内外で活動しています。これら小さな組合を「ゼネラル連合」とかいう名称で取りまとめる構想があるとかないとか・・・職場の状況から乖離する談話を読んだ組合員が果たして、この構想に諸手を挙げて同意するかどうか、大変不安であるのが正直なところです。

まだ国会の議論が残されている!最後まで頑張ろう!

この報告書は、こののち通常国会の議論に付されます。党派限定ではなく私たちの意を汲んでくれる議員との意見交換を深め少しでも前進し、次の改正が速やかに図れるよう頑張りましよう!

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