退職後の生活に退職金はとても重要です。しかし自分の退職金はどのように計算されるのか、制度の詳細を把握しているよ、という従業員はあまり多くありません。業績低迷を理由に退職金規定を改定していたことに気がつかない場合も決して珍しくはありません。こんな時どうすれば良いのか?諦める・・・どうしよう・・・そんな相談がありました。
【相談内容です】
1.郊外遊技場施設の営業主任。正社員。勤続11年。 2.就業規則等は事務所内・キャビネットに配置されている。随時閲覧は可能。 3.昨年末に確認した退職金規定では、勤続10年までは勤続年数×10万円、 11年から15年は勤続年数×15万円、勤続20年から24年は勤続年数×25万円、 25年以降は勤続年数×30万円となる。 4.勤続10年では10年×10万円で100万円の退職金。 勤続11年の場合は11年×15万で165万円となる。 5.9月30日で勤続11年を迎えることから、同日で退職しようと思い、退職金計算を 総務に依頼した。 6.総務では、退職金規定が変更となり、勤続25年までは勤続年数×10万円、 それ以降は勤続年数×40万円となったと説明された。 労基への届け出も2019年4月30日付で完了しているとのこと。 7.本人には全く知らされていない。許されるのか。
【以下のようにアドバイスしました】
1.就業規則の変更届け出は、労基法第89条に則った手続きで履行されていれば 受理された後、労基法違反としての刑事罰は免れる。 2.しかし、それと民事的効力とは別物。 3.就業規則の不利益変更なので、労働契約法第10条に適う内容でなければ無効。 4.つまり、労働者にとって不利益変更であっても合理的根拠があること、従業員に周知 説明していること等の要件を満たしているかどうか。 5.今回のケースも変更内容について本人等従業員に周知説明したかどうかがポイント。 6.周知説明がなければ無効となる。 無効を主張し、本来請求額165万円との差額を請求することになる。 7.普段から、自分たちの労働条件について改善の有無を話し合う事で、自然に就業規則 が話題となります。 8.定期的に話し合いが持たれていれば、このような就業規則改定にも気が付きます。 労働組合があれば、会社は必ず労働組合に就業規則改定を提示しなくてはなりません。 9.労働組合のない今回のケース、実際の請求行動は労働組合又は弁護士と 相談するほうが良いです。