最賃頼りの労働者実態をルポ 求む真剣議論

7月30日、CUNNはメール通信N0.1985で連合通信・隔日版の内容を配信し、ジャーナリストの東海林智氏のルポを紹介しました。同氏は、給与が最賃により決定される労働者の実態等を紹介し、無期雇用転換等の制度適用が実現しても最賃のみでは生活改善には程遠いとしています。また、このような実態を忠実に把握したうえで真剣な議論を期待するとしています。配信された内容は以下のとおりです。

◎  CUNNメール通信  ◎ N0.1985 2021年7月30日

1.(情報)〈働く現場から〉真剣に最賃の議論を/ジャーナリスト 東海林 智
                          210729連合通信・隔日版

 2021年度の最低賃金改定の議論が大詰めを迎えている。報じられている通り、
中央最低賃金審議会(中賃)は、28円の目安を示した。今年度は地域ごとのA~Dラ
ンクで同一の目安を示した。「史上最高の上げ幅」と官邸や与党は胸を張るが、昨年
度の目安が実質ゼロだったことを考えれば、胸を張れる額ではなかろう。とはいえ、
経営側が採決で反対するなど、経営側にとっていかに引き上げが厳しいかをアピール
する〃小芝居〃をする中、全国一律の目安での引き上げが議論されている。
 経営側の〃小芝居〃と書いたことに怒る方もいらっしゃるかも知れない。「中小零
細の厳しい状況を知らないのか」と。確かに飲食店など接客業を中心に、新型コロナ
ウイルスの影響で青息吐息の事業者はあるし、企業の倒産件数も増え続けている。だ
からと言って、2年連続ゼロにしなければならないほど、ひどい状態なのかといえ
ば、国税庁が発表した法人税の納税額や納められた消費税額を見ると、むしろ経済は
好調に回っていることを示している。最賃を引き上げるのが厳しいという、接客業や
中小・零細には引き上げのための支援をすれば良い。

【最賃で働くことの現実】

 こんな風に強く思うのは、今年、4年ぶりに最賃を巡る状況をじっくり取材できた
からだ。取材したのは中賃の議論ではなく、最低賃金の周辺で働く、中央、地方の労
働者たち。最賃で働く労働者の実態を知ってもらおうと、全労連などが例年以上に現
実にこだわってアピールした。出版労連の組合員で、東京都内の取次会社の下請けで
働く鈴木真貴さん(47)もその中で知り合った。
 鈴木さんは午前9時~午後5時まで、週6日間フルタイムで働く。賃金は、9年前
に契約社員で勤め始めた時から最低賃金に張り付いている。なので、現在の時給は1
014円だ。昨年8月に無期転換制度を利用して有期雇用から無期雇用に転換した
が、待遇改善はまったくなし。ボーナスや退職金が新たに出ることもなく、時給もび
た一文上がらなかった。
 今年の春闘で組合として賃上げを求めたが、「あなた方の賃上げは秋です(最賃の
改定に合わせるの意)」との回答だった。鈴木さんは「無期転換で安定したが、待遇
は改善するつもりはないのだと痛感した。最賃でしか私たちの賃金は上がらないの
だ」と唇をかむ。今回、実名を出して実態を語っているのは、処遇改善には最賃引き
上げに懸けざるを得ないからだ。

【「もののようで嫌だ」】

 有期労働者の無期転換制度ができる時、私は何度も「処遇改善をセットにしない無
期転換では、低賃金で一生働く労働者を増やすことになる」と書いた。現実は危惧し
た通りに進んでいる。ならば、他の条件の良い仕事を探せば良いのだと簡単に言う評
論家もいるが、現実はそんなに単純ではない。
 鈴木さんのケースで言えば、両親の介護を担うため、自宅から徒歩で行けて、労働
時間もきっちり決まっている仕事でないとできないのだ。最賃で働く人は、シングル
マザーを含め、多くが仕事を離れられない理由がある。
 鈴木さんは定時で働けると選んだ職場だが、それも怪しくなってきた。業務量が少
ない日は「早帰り」と称して定時になる前に仕事を打ち切られることや、前日に「明
日は有給で休みにして」と突然言われることも。同様に残業も突然言い渡される。こ
れは、収入の不安定さにもつながってくる。毎月の収入が分からないのだ。
 今回の取材の中で、このように会社の都合で勤務時間を都合良く変えられている労
働者は業種を超えていた。「仕事に来てすぐに帰れとか、もっと仕事しろとか、物の
ように出し入れされているようですごく嫌だ」。カフェで働く女性は吐き捨てた。
 物のように扱われる労働者の声は切ない。だからこそ、最低限の生活を支える賃金
として、最賃は機能しなければならない。今、そのことが真剣に考えられ、議論され
るべきだ。
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7月28日 北海道労働局前の最低賃金大幅引き上げ昼休集会(連合北海道・連合石狩地協共催)

札幌地区ユニオン/札幌パートユニオンは組合員7名が28日の昼休集会に参加しました。この後、審議会が開催されていますが、経営側の主張は判で押したように中央の経営側委員と一致しているとのことです。まあ、北海道では引き上げ賛成の経営側委員は記憶にありません。今回の引き上げには合理性があります。生きていくために必要であるという合理性です。1500円最低賃金の実現を目指してガンバロー!

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