従業員を何とか引き留めようとして色々手段を講じた結果、やっぱり辞めてしまった。この結果について、社内に問題があるのではないかと斟酌するのではなく、辞めた元従業員に「こんなに良くしてやったのに・・・」と怒りをぶつける、という相談でした。
【相談内容】
1.シティホテルコック(洋食)、正社員。 2.8月1日付入社。知人紹介で結構優遇され就いた。しかし、12月末日付け退職。 3.同僚・上司と合わず、また他の社員ともしっくりいかない。 4.そして、10月頃より、業務指導指示の在り方がきつく感じだした。 5.結果メンタル疾病にかかり、通院を余儀なくされた。 6.それでも総務から6カ月勤務後に付与される10日間の有給について先取りの付与可能 とされた。紹介者の口添えらしい。 7.しかし病状は改善に向かわないため12月16日に12月31日付け退職を申し出た。 8.料理長からは了解されが、その後、総務より通知が来て、先取り付与した有給10日間 について、本来付与されるべきではないので、その分の賃金を返還せよとされた。 1月末日までの期限とのこと。 9.今日再度、督促の通知が来た。返金しなくてはならないか。 10.本人から有給の希望は出していないのだが。対処方のアドバイスを願う。
【以下のとおりアドバイスしました】
1.結論から言うと、返金しなくて良いです。 理由は「入社日に付与する等法定を上回る有給休暇の付与をしたとしても、それを法定 基準の取り扱いに戻すといった措置は取れない。一旦有利な条件で付与(分割付与)し た有給休暇を後に控除する事は出来ないということ。法定を上回る当該年休はあくまで 法定年休の一部。不利な取り扱いをすることは認められない。」という通達が厚労省か ら出ているからです。 2.労働基準法第1条第2項でも「この法律で定める労働条件の基準は最低のものであるか ら、労働関係の当事者は、この基準を理由として労働条件を低下させてはならない」と 宣言しているので、労基法を上回る条件も同意していれば契約となるということ。 3.ご本人はその旨会社に返事をすることです。 4.ただ、本人単独よりも労組対応を進めます。一度来館して相談しませんか。 5.通達の内容は、ご自身で調べてみてください。労基に確認しても教えてくれます。
観光業界・宿泊業界には結構この手の話が出てきます。採用と労務管理の二重構造が未だ残っていること、労務担当者が意外と不勉強であることに原因があると指摘する人もいます。しかし、評論していても事態は好転しません。相談を通じて改善しませんか。