今年6月1日(中小は22年4月1日)から事業者にパワハラ防止措置が義務化されました。皆さんの職場では就業規則の見直し等が進んでいますでしょうか。改めてパワハラ・苛めによる被害について考える機会が必要ではないかと感じます。体験した被害が完全に癒えることはありません。その辛さについて、相談が寄せられました。
【相談内容】 1.以前に直属の上司から受けたパワハラ・苛め被害のトラウマに悩んでいる。 2.会議室に二人きりの状況にされ、静かな口調ではあるが、自分の仕事に対する 駄目だしを延々と聞かされた。 勿論、上司は椅子掛けで本人は正面に直立の立ち姿。 3.他の部下にはこのようなこみとはせず、明るい口調で注意するが、何故か自分だ けは個別に隔離され、威圧的な駄目だしとなる。そして、必ず最後にこの仕事に向 いていのではなか、と言って終了となる。 4.自分の前にも、一人同様の扱いを受けていた社員がいて、その社員は退職した。 5.本人は、通院し休みがちになりながら、必死に耐えてきたが、我慢も限界と思った 頃、今年4月の人事異動により同上司が昇格して別の部に移った。 6.一瞬ホッとはしたが、忙しくなると、その上司の威圧的言動がフラッシュバックの ように出てくる。また、社内の廊下等ですれ違ったり、見かけたりすると、気分が 悪くなる。 7.このような、状況で入院等に至った場合は労災として認められるか。
【以下の様にアドバイスしました】
1.労災認定の是非は医師・労基への事前相談で判断するしかないが、過去の出来事に
対する判断・因果関係調査なので、本人をサポートしてくれる同僚・証人の確保が
できるかどうか、がポイント。
2.しかし、今は被害・病気に対する処置が優先なので、傷病手当の請求から始め、
心身を休めることを優先にしてはどうか。
3.医師との問診の中で、受けた被害の治療に加害者に対するアプローチが有効である
との意見が出てくれば、会社を交えての交渉・協議というスタイルを選択してはど
うか。
4.会社の参加を求めていくのであれば、団体交渉という形式が良く、労働組合からの
アプローチとなる。過去の被害者なども含めて、具体的な取り組みを検討する機会
を設定することも良いが、まずは今の心身のケアを優先してはどうか。
心の傷が癒えたかどうかは本人にしか判断できません。しかし、パワハラ・苛めによる心身の被害は傍から見て「何か変だな!」とわかります。短時間の規則改定の議論では、「被害の怖さ」がイメージできないかもしれません。何故、このような法律が出来上がり、職場に措置義務化となるか真剣に考えてみる必要があります。