労基法の見直し方向示す/厚労省有識者研究会/柔軟化の「指南書」に 231021連合通信・隔日版

CUNNは10月23日、メール通信NO.2382を配信し、厚生労働省の有識者研究会「新しい時 代の働き方に関する研究会」が10月13日にまとめた報告書を紹介しました。連合通信が21日の隔日版に的確な解説が読みごたえがあります。また、報告書は札幌地区ユニオンが10月15日に「労基法改定の検討がはじまっています」として紹介したものと同様です。詳細は以下の通りです。

◎  CUNNメール通信  ◎ N0.2382 2023年10月23日

1.(情報)労基法の見直し方向示す/厚労省有識者研究会/柔軟化の「指南書」に
                                                 231021連合通信・隔日版

 労働基準法の今後の方向性を検討してきた、厚生労働省の有識者研究会「新しい時
代の働き方に関する研究会」が10月13日、報告書をまとめた。今後の労基法の検討の
視点として、封建的労働慣行の排除と「心身の健康」を「守る」べきものとし、労働
者の多様な働き方の選択とキャリア形成を「支える」という新たな視点を提起してい
る。厚労省の鈴木英二郎労働基準局長は同日の審議で、「報告書を指南書、マニュア
ルとして労基法や契約法制、労働政策全般を検討していきたい」と述べた。
 報告書は、リモートワークやフリーランスの増加など、労基法制定時には想定され
なかった働き方の広がりに着目。労基法の検討の視点として従来の「守る」に加え、
「支える」という視点を提示した。
 「守る」の視点では、強制労働や中間搾取の排除など封建的労働慣行の排除と、
「心身の健康」を守るべきものとする。
 「支える」の視点については、「働く人の自発的な選択と希望の実現を「支える」
ことができるよう、『多様性尊重の視点』に立って整備されていくことが重要」とし
た。
 「健康確保」が繰り返し強調される一方で、1日8時間労働など労働時間規制を守
るとの視点は見られない。本人の希望次第で「自由」に働ける柔軟な対応を志向する
記述が目立つ。
 今後の労働基準法制の方向性としては、過半数労組や過半数代表に加えた「多様・
複線的な集団的な労使コミュニケーション」のあり方や、労基法上の「労働者」「事
業」「事業場」の基本的概念のあり方の検討のほか、「従来と同様の働き方をする人
が不利にならない」ための措置、AI・デジタル技術を活用した労働基準監督体制の
構築――などを列挙している。

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   〈メモ〉実労働時間規制の転換

 報告書は、時間や場所、企業にしばられない働き方が今後広がるとの近未来の社会
像を描きながら、実労働時間を規制する労働基準法を、「健康確保」を主に守る規制
に転換しようとしていると指摘される。
 政府は、裁量労働制の拡大や高度プロフェッショナル制など実労働時間規制が行わ
れないルールの拡大を推進してきた。さらに近年は、副業・兼業の推進、フリーラン
スの拡大にも舵を切った。
 報告書はこの流れと軌を一にし、「自発的な選択と希望の実現」を支える労働基準
法制への転換を表明。労基法の基本概念である「労働者」「事業」「事業場」のあり
方の検討を示唆した。
 その狙いについて、本久洋一国学院大学教授(労働法)は「実時間規制を外して、
請負業務委託で働く人に(労基法を)適用する。つまり、『フリーランス保護』を踏
み台にして労基法の規制を薄めようとしている」と警告する。
 裁量労働制の「労働時間の状況把握」や高プロ制の「健康管理時間」など、実労働
時間管理を必要としない緩い規制を中心とすることで、フリーランスにも適用を広げ
ようとしているのではないかという指摘だ。
 さらに、国の中長期的な展望として「フリーランス支援、働き方の多様化の美名の
下、労基法から『労働者』『事業場』という枠を外し、実労働時間規制から健康保護
へと規制を大きく転換するということが読み取れる」とも解説する。研究開発やI
T、管理的業務に携わる正社員の事実上のフリーランス化を視野に入れた制度整備を
行う将来構想ではないかと危惧する。
 厚生労働省は報告書を受け、検討会を近く開始するという。一日8時間働けば暮ら
せる社会という働く者の願いと逆行しないか、注意が必要だ。

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