◎ CUNNメール通信 ◎ N0.1403 2018年5月17日
(情報)危険な内容、浮き彫りに/高プロ制の国会審議/課題残したまま強行採
決か
180517連合通信・隔日版
働き方改革関連法案の実質審議が始まった。与党は今月中にも衆院での採決を強行
する構えとみられる。5月9日、11日の厚生労働委員会審議では「高度プロフェッ
ショナル制度」の危険な内容が改めて浮き彫りとなった。
●長時間労働は自己責任
「長時間労働を抑制できるのか」との西村智奈美議員(立憲民主)の質問に対し、
加藤勝信厚生労働大臣は「(当事者)ご自身が判断して答えを出していく」と述べ
た。長時間労働は自己責任ということ。
併せて大臣は「健康確保措置を盛り込んでいる」と弁明した。同措置は、年104
日以上の休日を義務付けた上で(1)勤務間インターバル(2)労働時間の上限設定
(3)残業が一定時間超えた人への健康診断――などから一つを選択する仕組み。こ
のうち(3)の健康診断を選べば、長時間労働抑制の保障はほとんどなくなる。
●「人が死ぬ制度」
法案は、例えば5日間連続24時間労働を命じても違法ではない。この点を指摘した
大西健介議員(国民民主)に対し、加藤大臣は「理論上で言えばいろんなことが想定
されるわけだが、そういう形は論外」と、歯止めがないことを事実上認めた。
大西議員は「机上では可能でも、現実には起こりえない。そんなことをしたら死ぬ
からだ。死ぬことが起こり得る制度を作ることになる」と批判した。働き手を使い捨
てにする「ブラック企業」が、野放しになる事態が懸念される。
●裁量がない!
法案は、現行の裁量労働制と違って、出退勤や時間配分に関する裁量が明記されて
いない。朝から深夜まで働かせることも可能と指摘される。裁量について、大臣は
「働く時間帯や時間配分を自ら決定していく。省令で明確に書かせていただく」。制
度の肝の部分を法制化せず、省令で済ませていいものだろうか。
●ヒアリング「十数人」
何より仰天させられたのがこの答弁。制度のニーズを問う岡本あき子議員(立憲民
主)の質問に、大臣は「十数名からヒアリングした」と述べ、制度創設が求められて
いたと答えた。
岡本議員は「国民をばかにしているのではないか」「10人なんかで7千万労働者の
判断をしていいのか」と怒りを爆発させた。
●深夜割増省きたいだけ
同じく制度のニーズを問う高橋千鶴子議員(共産)に対し、加藤大臣は自由に時間
を使うことで創造的な仕事ができるようになるとし、「夜間の賃金が高くなればその
時間は(働くのを)やめてくれとなるわけだけれども、夜間働いた方が効率が高い人
もいる」と述べた。現行法でも夜間に働くことは可能。高プロ制にすれば深夜割増手
当を支払わずに済む。高橋議員は使用者が得をするだけの制度と批判した。
●小さく生んで大きく…
塩崎恭久前厚労大臣は2015年春、経営者の会合で「(高プロ制を)小さく生ん
で大きく育てる」と理解を求め、物議を醸した。山井和則議員(国民民主)は年収要
件の「年間平均給与の3倍(1075万円)」を引き下げる可能性を問うたところ、
大臣は「10年先、20年先、30年先を言われても答弁できない」。大臣は将来の引き下
げを決して否定しない。導入の狙いが透けて見える。
●行政のさじ加減次第
高プロ制適用の業務要件は「働いた時間とそれで得た成果との関連が高くない業
務」。研究開発職やアナリストなどを例示しているが、具体的には法制定後に省令で
定める。省令改正に法改正は不要。対象拡大は行政のさじ加減次第だ。